英会話教室を開業するとき、必ず必要になるのが「各種届出」です。提出先が税務署・都道府県・市区町村と複数に分かれており、個人事業と法人設立でも必要書類が異なります。この記事では、ケース別に必要な届出を抜け漏れなく解説します。本記事を読み終える頃には「自分のケースで何を出せばいいか」が明確になり、税務署や役所で迷うことがなくなります。届出の種類自体は5〜10個程度で、1つ1つは決して難しくありません。順番とタイミングさえ押さえれば、1日で主要な届出は全て提出可能です。
届出を怠ると節税ができない、罰則を受けるなどの不利益があります。面倒でも開業初期に全部済ませておきましょう。特に青色申告承認申請書を出し忘れると、その年度は白色申告となり、65万円の控除を丸ごと失うことになります。これは所得300万円の人なら住民税・所得税合わせて15万円以上の損失に相当するため、提出期限は絶対に守る必要があります。届出の書き方自体は難しくないので、本記事を見ながら順番に処理していけば、初めての人でも1〜2時間で全て完了できます。
また、届出は「出したら終わり」ではなく、控えをPDFまたは紙で保管しておくことが重要です。後から融資を受ける際や、補助金を申請する際に「開業届の控え」の提出を求められるため、スキャンしてクラウドストレージに保存しておくと安心。紙だけで保管していると紛失リスクがあるので、デジタル化は必ずしておきましょう。e-Taxで提出した場合は自動的に電子控えが残るため、管理が最も楽な方法です。
- 個人事業主・法人別に必要な届出
- 各届出の提出先・期限・記載ポイント
- 都道府県・市区町村への届出
- 社会保険関連の手続き
- 開業届出のタイムライン

なぜ届出が必要なのか
届出は「事業を始めました」と公的機関に知らせる手続き。届出を出すことで青色申告ができ、最大65万円の所得控除を受けられます。また、税務署や行政からの各種案内が届くようになり、事業運営に必要な情報を得られます。届出がないと「副業の雑所得」扱いになり、経費計上の幅が狭くなったり、小規模企業共済などの事業主向け制度を利用できなくなったりします。個人事業主として本格的に英会話教室を運営していくなら、届出は「最初の第一歩」として必ず通過すべき関門です。届出を出すことは「自分は事業者として責任を持って運営します」という対外的な表明でもあり、気持ちの面でも開業スイッチが入る効果があります。
もう一つの大きなメリットは「屋号付き口座の開設」です。開業届を出していないと屋号名義の銀行口座を作れず、受講料の振込先が個人名になってしまいます。受講者からすると「本当にちゃんとした事業者なのか」と不安を感じる要素になるため、信頼獲得の意味でも屋号口座の開設は早めに進めるべき。多くの銀行で開業届の控えが必須書類になっているので、まずは税務署への届出を済ませてから口座開設に動きましょう。ネット銀行のGMOあおぞらネット銀行やPayPay銀行は屋号付き口座を比較的早く開設できるためおすすめです。
個人事業主として開業する場合
個人事業主として開業する場合は、税務署への「開業届」と「青色申告承認申請書」の2点が最優先です。この2つは開業届出のメインイベントで、これさえ出せば個人事業主としての基本形は整います。副業から英会話教室を始める場合でも、開業届を出すことで「事業」として認められ、経費計上の幅が広がるため、できるだけ早く提出するのがおすすめ。副業で月5万円以上の収入を継続的に得るなら、開業届は必須と考えてください。個人事業主は法人と違って設立コストがゼロ・維持コストもゼロなので、気軽に始められる形態です。廃業する際も「廃業届」を1枚出すだけで終わるため、撤退コストも最小で済みます。
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
- 提出先: 納税地を所轄する税務署
- 提出期限: 事業開始から1ヶ月以内
- 手数料: 無料
- 提出方法: 窓口持参/郵送/e-Tax
- 必要情報: 氏名・住所・屋号・事業内容・開業日
記入自体は10分ほどで終わります。事業内容欄には「英会話教室経営」と記載。業種によっては特別な許可が必要ですが、英会話教室は特別な許認可不要です。屋号欄は任意ですが、記入しておくと屋号付き口座を開設する際にスムーズです。「職業」欄は「教育業」または「語学講師」と書けばOK。「所得の種類」は「事業所得」を選択し、「開業・廃業に伴う届出書の提出の有無」では青色申告承認申請書にもチェックを入れておくと、1枚でまとめて提出できて効率的です。マイナンバーの記載欄があるので、マイナンバーカードや通知カードを手元に用意しておきましょう。書類に記入する際は、税務署が公開している記入例PDFを見ながら進めると迷いません。国税庁のウェブサイトから誰でもダウンロードできるので、事前に目を通しておくと窓口での時間短縮にもつながります。
青色申告承認申請書
- 提出先: 所轄税務署
- 提出期限: 開業から2ヶ月以内(または年度内)
- 手数料: 無料
- メリット: 最大65万円控除、赤字繰越3年、家族給与経費化
手続きは開業届と同時に5分で終わります。節税効果を考えれば、申請しない理由がありません。
青色申告の65万円控除を受けるには、複式簿記で帳簿をつけ、貸借対照表と損益計算書を提出する必要があります。手書きでやると大変ですが、freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトを使えば、日々の入力だけで自動的に複式簿記の帳簿が完成します。月額1,500円程度のコストで15万円以上の節税ができるため、会計ソフト導入は必須と考えてください。e-Tax経由で電子申告すれば65万円控除、紙提出だと55万円控除になるため、確定申告もオンラインで完結させるのが賢明です。会計ソフトは銀行口座やクレジットカードと連携すると、取引明細を自動取得して仕訳候補を提示してくれるので、入力作業は月1〜2時間程度で済みます。これは手書き帳簿と比べると月20時間以上の時短効果があり、本業のレッスン準備や受講者獲得活動に充てられる時間が劇的に増えます。
給与支払事務所等の開設届出書
家族や従業員を雇う場合に必要。提出期限は雇用開始から1ヶ月以内。ひとり事業なら不要。配偶者や親を「青色事業専従者」として雇う場合、別途「青色事業専従者給与に関する届出書」も必要になります。これにより家族への給与を経費として計上でき、さらなる節税につながります。専従者として認められるには「その事業に半年以上専念していること」「15歳以上」などの要件があるため、要件を満たすかどうかを事前に確認してから届出を出しましょう。また、「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」を併せて提出すると、毎月納付が必要な源泉所得税を半年に1回のまとめ納付に切り替えられるため、事務負担が大きく軽減されます。従業員が10名未満であれば誰でも利用できる特例なので、小規模事業者は必ず申請しておきましょう。
法人として開業する場合
このあと解説する登記申請・法人設立届出書は、法人ならではの手続きで、個人事業主より手順が多くなります。ただし、2010年代以降は「マネーフォワード会社設立」「freee会社設立」などのオンラインサービスで設立書類を無料で作成でき、合同会社なら6万円の実費のみで設立可能になっています。昔のように司法書士に20万円払って全部お任せする必要はなく、DIY設立が現実的な選択肢になっています。とはいえ、定款の記載ミスがあると登記がやり直しになるため、慎重に進めてください。自信がなければ最初の1社だけ司法書士に依頼し、2社目以降は自力で設立するという学習パターンもあります。
法人化するメリットは「社会的信用」「節税」「有限責任化」の3点です。法人名義の契約ができるため、大型の物件契約や法人向けの法人口座開設、融資審査などで有利になります。一方でデメリットは「設立コスト」「維持コスト(法人住民税均等割7万円)」「事務負担の増加」。開業1年目から法人化するケースは稀で、多くの英会話教室は個人事業で1〜3年運営してから法人化する流れを取ります。課税所得が800万円を超えたあたりが法人化の損益分岐点の目安です。合同会社(LLC)なら設立費用が6〜10万円程度と安く抑えられ、運営の自由度も高いため、小規模な英会話教室の法人化先として人気があります。株式会社は設立費用が20万円以上かかりますが、対外的な信用度が最も高いという特徴があります。どちらを選ぶかは「誰に対して信用を見せたいか」で判断すると良いでしょう。
定款作成・認証
会社設立のルールを定めた書類。公証役場での認証が必要(合同会社は不要)。電子定款なら印紙代4万円が不要。定款には「商号」「本店所在地」「事業目的」「資本金の額」「発起人の氏名」などを記載します。事業目的には「英会話教室の経営」「語学教育サービスの提供」「書籍・教材の企画・販売」など、現在と将来の事業を広めに記載しておくのがポイント。後から事業目的を追加するには3万円の変更登記費用がかかるため、最初から広めに書いておくと経済的です。
登記申請
法務局への登記申請で会社が成立。登録免許税は資本金の0.7%(最低15万円、合同会社は最低6万円)。司法書士に依頼すれば5〜10万円の報酬が必要ですが、自力でも可能。マネーフォワード会社設立やfreee会社設立といった無料ツールを使えば、必要書類をウィザード形式で作成でき、自力登記のハードルは大きく下がっています。時間に余裕があれば自力登記、時間がなければ司法書士依頼という判断基準でOK。登記完了までは申請から1〜2週間ほどかかるため、開業日から逆算して余裕を持って進めましょう。資本金は1円から設定可能ですが、実務的には「当面の運転資金+設立費用」を賄える金額(100万〜300万円程度)を資本金として設定するのが一般的です。資本金1,000万円未満なら消費税の免税事業者として2年間優遇される可能性があるため、税理士と相談のうえで金額を決定してください。
法人設立届出書
- 税務署への「法人設立届出書」(2ヶ月以内)
- 都道府県・市区町村への「事業開始届」
- 青色申告の承認申請書(3ヶ月以内)
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納期の特例に関する申請書

都道府県・市区町村への届出
都道府県税事務所に「事業開始等申告書」、市区町村には「事業開始届」を提出します。締切は都道府県により異なりますが、おおむね開業から15日〜1ヶ月以内。個人事業主も原則必要。これは「個人事業税」の課税対象となるための届出で、事業所得が290万円を超えると個人事業税(業種により3〜5%)がかかります。英会話教室は「請負業」または「コンサルタント業」に分類されることが多く、税率は5%。忘れやすい届出なので、税務署への開業届と同じタイミングでまとめて処理しておくと漏れがありません。東京都・大阪府など主要都道府県は申告様式が微妙に異なるため、自分の所在地の都道府県税事務所ウェブサイトから最新フォーマットをダウンロードして使用してください。市区町村への届出は任意としている自治体もあるので、事前に電話で確認すると二度手間を防げます。
都道府県・市区町村への届出は、税務署への届出よりも認知度が低く、「開業届を出せば全部終わり」と勘違いしている開業者が少なくありません。実際には税務署とは別の届出が必要で、提出しないと数年後にまとめて個人事業税を請求されるケースもあります。都道府県税事務所は都道府県庁の支所として各地域にあり、市区町村役場と合わせて1日で回れる範囲にあることがほとんど。税務署と同じ日にまとめて処理してしまうのが最も効率的です。
社会保険・雇用保険の届出
- 健康保険・厚生年金保険(従業員雇用時、または法人なら社長単独でも加入)
- 労災保険(従業員1人でも必須)
- 雇用保険(週20時間以上の従業員を雇った場合)
個人事業主ひとりなら、国民健康保険・国民年金で十分。従業員を雇った瞬間に各種社会保険の加入義務が発生します。社会保険の加入手続きは年金事務所・ハローワーク・労働基準監督署と窓口が分かれていて複雑なので、従業員を雇うタイミングで社会保険労務士に依頼するのが効率的です。社労士への月額顧問料は2〜3万円程度で、労務トラブル対応や給与計算まで任せられるため、講師を複数名抱える規模になったら検討する価値があります。
また、個人事業主でも加入しておくべきなのが「小規模企業共済」と「国民年金基金」です。小規模企業共済は月額最大7万円までの掛金が全額所得控除になる積立型の退職金制度で、節税しながら将来の備えができます。国民年金基金は国民年金に上乗せする年金制度で、老後の年金受給額を増やせます。どちらも事業主向けの制度として非常に優遇されているため、所得が安定してきたら早めに加入するのがおすすめです。iDeCo(個人型確定拠出年金)も併用すると節税効果をさらに高められ、老後資金の三本柱が完成します。これら3つを満額で運用すれば、所得控除だけで年間100万円を超えるケースもあり、節税効果は非常に大きいと言えます。
届出タイムライン
届出のタイムラインを視覚化しておくと、抜け漏れを防げます。以下のスケジュールは個人事業主の標準的な流れで、法人の場合は登記申請が最初のステップとして加わります。各届出には提出期限があるため、開業日が決まったらすぐにGoogleカレンダーやスプレッドシートにリマインダーを設定しておくのがおすすめ。特に青色申告承認申請書の2ヶ月という期限は、他の作業に追われているうちにうっかり過ぎてしまいがちなので、最優先でスケジューリングしてください。開業日から遡って各期限を逆算するのではなく、開業日から順算で「開業1日目にこれ、3日目にこれ」と割り当てていくと、タスクが整理されて実行しやすくなります。
- 開業日当日〜7日以内: 事業用銀行口座開設
- 開業から15日以内: 都道府県・市区町村への事業開始届
- 開業から1ヶ月以内: 税務署への開業届
- 開業から2ヶ月以内: 青色申告承認申請書
- 従業員雇用開始時: 社会保険・労働保険関連届出
よくある質問
e-Taxで開業届を提出する手順は「マイナンバーカード読取→国税庁e-Taxサイトにログイン→『開業届』フォーム入力→送信」の4ステップ。スマホのマイナポータルアプリでも提出できるようになっており、税務署に行く必要がありません。窓口提出より早く、控えもデジタルで残るため、ペーパーレスで事業を回したい開業者にとっては理想的な方法。青色申告承認申請書も同じタイミングでe-Tax提出できるので、合わせて処理しておくと効率的です。
まとめ
開業届出は面倒に見えますが、一度済ませれば後は楽です。個人事業主なら30分、法人なら数週間の準備で完了。青色申告のメリットを逃さず、開業初月のうちに必要書類を全て揃えましょう。税務署や役所は「書き方がわからない」と素直に窓口で聞けば、担当者が記載方法を親切に教えてくれます。一人で悩まず、窓口で相談しながら書くのが最も早い方法です。特に初めての開業では不安が多いと思いますが、届出自体は「書類を記入して提出するだけ」のシンプルな作業なので、身構えすぎないでください。
最後に、届出提出後のアクションとして「屋号口座の開設」「会計ソフトの契約」「確定申告スケジュールのカレンダー登録」の3つは必ず実行しておきましょう。開業届を出して終わりではなく、その後の運営を支える仕組みを同時に整えることで、開業後のキャッシュフロー管理と税務対応がスムーズになります。開業初月に土台を固めておけば、2ヶ月目以降は本業の受講者獲得とレッスンに集中できる体制が完成します。